三田誠広 『 いちご同盟』 あたしと、心中しない? 【ネタバレ感想】

小説

中学三年生の良一は、同級生の野球部のエース・徹也を通じて、重症の腫瘍で入院中の少女・直美を知る。徹也は対抗試合に全力を尽くして直美を力づけ、良一もよい話し相手になって彼女を慰める。ある日、直美が突然良一に言った。「あたしと、心中しない?」ガラス細工のように繊細な少年の日の恋愛と友情、生と死をリリカルに描いた長篇。

(引用: 集英社文庫 / 三田誠広 / いちご同盟 / 背表紙)


すばら
すばら

今回は、三田誠広さんの『いちご同盟』についての
ネタバレ・感想レビューになります。






主な登場人物

北沢良一:ピアノのレッスンに通う日課を持つ。11歳の少年の飛び降り自殺をきっかけに自殺について考えている。

羽根木徹也:野球部のエースで4番。幼馴染の直美に見せるため、北沢に野球の試合をビデオで撮るように頼みに来る。

上原直美:重症の腫瘍で入院中。自分のおかれた境遇にもめげずに懸命に生きようとしている。




あらすじ

北沢が音楽室で『 亡き王女のためのパヴァーヌ』を弾いていると1人の男子生徒が入ってきました。


同級生の野球部のエース、羽根木徹也は北沢に明日の試合をビデオで撮ってくれと頼みに来たのでした。


断ろうと思っていたが、人の命がかかっているといわれ、北沢は渋々了承しました。
(徹也からはおれだけ撮ればいい、特に観客席、女は撮るなと言われる)


試合終わりに明日の予定を聞かれ、新町の総合医療センターに来るよう言われた北沢は、


病院に向かうとそこには、徹也とは幼稚園の同級生の上原直美は入院していて、


初めて北沢と出会ったのでした。


次の試合の撮影も頼まれ、 直美が北沢に会いたがっていると徹也に言われた北沢は、
(ここで北沢は行くと即答しており、既に直美に惹かれている様子)


徹也からピアノを弾いているところを直美に見せるから弾けと言われ、ビデオに撮りました。


病室で鑑賞中、「これ、なんという曲なの?」と聞かれましたが、


題名に『亡き』とはいっているため、うまく答えられませんでした。


鑑賞が終わり世間話をしていると、直美は急に「二人には希望があっていいね」と言い、


拗ねるそぶりを見せたのでした。


直美は、足に腫瘍があり片足を切断した後だったため神経が過敏になっていて、


ちょっとしたことでも二人にあたってしまったのです。
(幼く、多感な時期なのでしょうがない気がしますね…)


時が流れ、直美は十五歳になるからピアノを弾いてくれと北沢に頼みました。


演奏後、アンコールでラヴェルを頼まれ、北沢は固まってしまい困っているところ、


直美は、

「だいじょうぶ。あたしは王女じゃないから、気にしないで」と言い、弾いてもらうのでした。
(亡き王女ではないという意)


そんなこんなから、夏期講習で忙しくなった北沢は病院に行けない日々が続いていましたが、


徹也に直美が手術することを聞かされると、急いで向かい


そこで、直美に「あたしと、心中しない?」と言われたのでした。

とまぁ、簡単なあらすじとしては以上になります。

以下に、ネタバレがありますので、読破していない方はお気をつけください。




















ネタバレ

徹也に直美が好きかと聞かれた北沢は、


好きと反射的に答え、自分の気持ちに正直になりました。


そうか、直美もお前が好きだ。と徹也はいって、


「お前が張り合う気なら、おれは、フェアに勝負したい。これからいっしょに病院に行くか」と言います。
(徹也の直美を思いつつも北沢のことも考えられるいいやつ感が半端ないですね)


結局、その日は行けず、ぐずぐずしていましたが思い切って見舞いに行き、好きだと伝えたのです。


また、直美も「あたしもあなたが好き」と想いを伝えあうのでした。


直美の手術後、その帰り道に北沢が十五歳になったので、みんな十五歳になっています。


徹也に自殺したがっていたことを見抜かれていた北沢は、



徹也に、
「死ぬな、百まで生きろ俺も生きる直美をずっと憶えていよう」


同盟を結ぼう。俺たちは十五歳だから、一五(いちご)同盟だ。男と男の約束だぞ


タイトルの『いちご同盟』とはこの約束のことだったのでした。


手術後、肺炎をおこし、喉を切開したため声が出なくなっていた直美でしたが、


「あなたはいつも、黙り込んでいるのね」


という、いつものやり取りを目が語っており、北沢は目を見つめたまま黙り込んでしまいます。


直美の唇がスローモーションで動き、

あ・な・た・が・す・き

し・ぬ・ほ・ど・す・き


と死が間近に迫っている直美は北沢に思いを伝えたのでした。


直美の死後、北沢と徹也の2人は互いに生きろよと言い合うと、


人影の途絶えた夜の道を、どのまでも真っ直ぐに歩き続けたのでした。




感想

青春小説として金字塔の一冊。


単純な三角関係ではなくノスタルジックな雰囲気が漂うそんなお話。


ちょっとした自殺願望があった北沢が直美に出会い、


徹也と『いちご同盟』を組み、生きていくことを決め成長していくのは青春であり、


十五歳当時の多感な気持ちを思いださせてくれます。


特に印象的だった一文紹介。

「可能性がある人がうらやましい。自殺のことを考えるなんて、贅沢だわ」

直美による一言。どんな時でも可能性がある限りは頑張ろうと思わされます。




最後に

今回紹介した、『いちご同盟』ですが、


本作が漫画『四月は君の噓』でオマージュされました。


『四月は君の嘘』から『いちご同盟』にたどり着いた方もいるのではないでしょうか。


『いちご同盟』を読み、『四月は君の嘘』を見ていない人は、ぜひ見てみてください。


アニメ化もしていますのでぜひお楽しみ下さい。


いかがでしたでしょうか。長々となりましたが少しでも『いちご同盟』の魅力が伝わっていれば幸いです。

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